賃貸不動産をお持ちの方から、「子どもたちには平等に残したい。でも、不動産共有は避けたい」という相談を受けることがあります。
ある73歳の男性は、栃木県内の駅近に、8室の賃貸アパートを所有していました。
資産価値は約1億1,000万円。
現在は満室経営で、安定した家賃収入があります。
お子様は、
・長男(東京都在住)
・次男(神奈川県在住)
・長女(栃木県在住)
の3人です。
兄弟仲は良好でしたが、男性には一つ気がかりがありました。
それは、「相続後、アパートを3人で共有にしてしまうと、将来トラブルにならないだろうか」という点でした。
実際、賃貸不動産を共有すると、
・修繕をするか
・建替えをするか
・売却するか
といった判断で意見が分かれ、身動きが取れなくなるケースもあります。
特にこのケースでは、長女が近くに住み、以前からアパート管理を手伝っていました。
男性としては、「管理は長女に任せたい」という想いもありました。
しかし、単純に長女へ不動産を相続させる遺言を書くだけでは、他の兄弟との公平感が崩れ、遺留分トラブルにつながる可能性もあります。
そこで検討されたのが、信託です。
このケースでは、
・委託者:父
・受託者:長女
・第一次受益者:父
・第二次受益者:長男・次男・長女
・信託財産:賃貸アパート+預金1,000万円
という形で整理しました。
長女がアパートの管理・修繕・建替え判断を行いながら、収益は家族全体へ分配される仕組みです。
さらに、
・長女死亡後は孫へ受託者承継
・受益権は各家系へ承継
といった内容まで整理しておくことで、“不動産を共有せずに、収益を家族で分かち合う”形を目指しました。
結果として、
・管理する人を一本化できる
・共有トラブルを防ぎやすい
・家族関係を維持しやすい
・長期的な建替え判断もしやすい
というメリットが期待できます。
相続対策では、「平等に分けること」に意識が向きがちです。
しかし実際には、“管理する人”と“利益を受ける人”を分けて考えることで、家族に合った形が見えてくることもあるのです。
(2026.5.28)
相続対策のご相談を中心に、「何から始めればいいか分からない」という段階からのサポートを行っています。